Googleフォームは、イベント申し込み、アンケート、研究発表の演題登録など、さまざまな情報収集に使える便利な無料ツールです。
本シリーズでは、Googleフォームを活用し、入力された内容をもとに自動で整形・返信・PDF出力までを実現する方法を、複数回に分けてご紹介していきます。
注意:一連のシリーズで利用する方法は、イベント運営や日常業務でのメール送信等、学会・研究会運営以外の仕事内容にも活用可能な方法です。
なお、学会の運営に実際に利用される方は、大きなトラブルはないものと自負しておりますが、自己責任でお願いいたします。
第1回:「フォームの作り方と設計上の注意点」
Googleフォームの基本的な作成手順
Googleフォームにアクセス
Googleアカウントにログインした状態でアクセスすれば、すぐにフォームの作成が可能です。
空白のフォームを作成する
「空白」をクリックして新しいフォームを作成。
フォームのタイトル・説明を入力します。

質問を追加する
Googleフォームでは以下の形式が使えます。
学会の演題登録を想定すると、下記のような内容と形式を選択できます:
質問形式 | 用途例 |
---|---|
記述式 | 氏名、所属、演題など |
段落 | 抄録や自由記述欄 |
ラジオボタン | 発表形式の選択など |
チェックボックス | 複数の所属番号の選択など |
プルダウン | カテゴリや所属の選択など |
補足:選択形式が可能なものは可能な限り選択形式にすると、表記ゆれによるトラブルが減らせます。
学会演題登録を目的としたフォーム設問の例
Google formの設問の例を示します。その後、設計の注意点とその意図を説明します。
【1ページ目】基本情報入力
- メールアドレス(必須)
- 事前参加登録時の受付番号(数字5桁)(必須)
- 発表区分の選択(必須)
(一般演題(口頭)、一般演題(ポスター)、YIA応募(口頭)) - 筆頭演者の姓(必須)
- 筆頭演者の名(必須)
- 筆頭演者の姓ふりがな(必須)
- 筆頭演者の名ふりがな(必須)
- 筆頭演者の連絡先住所(必須)
- 筆頭演者の電話番号(必須)
- 筆頭演者の所属機関名(必須)
- 演題タイトル(100文字以内)(必須)
- 抄録本文(1000文字以内)(必須)
- 演題区分 第一希望(必須)
- 演題区分 第二希望(必須)
- メールアドレス確認(必須)
【2ページ目】共同演者所属機関入力(所属2~5)
- 所属2(任意)
- 所属3(任意)
- …
- 所属5(任意)
【3ページ目】共同演者情報入力(最大9名まで)
筆頭演者の所属番号選択(必須)
共同演者1人目:姓/名/所属番号(任意)
共同演者2人目:姓/名/所属番号(任意)
共同演者3人目:姓/名/所属番号(任意)
…
共同演者9人目:姓/名/所属番号(任意)
設計上の注意点
1. 入力ミス・漏れを防ぐため、必須項目を明確に設定する
- メールアドレス、氏名、ふりがな、所属、演題タイトル、抄録本文など、必須事項には必須設定を行い、回答漏れを防止。
- 回答例(例:「日本太郎の場合:日本」など)を明示し、フォーマットの揺れを防ぐ。
- 姓と名は別々の設問に分けて入力させることで、スペースの全角・半角混在や、無記入などの表記ゆれを防いでいます。
2. 回答内容が多い場合はセクション分けを行う
- 3セクションに分割し、回答負担を軽減。
- 各セクションの冒頭で「このページで入力する内容」を説明し、全体像を見通せるようにして、途中離脱を防止。
- 特に共同演者情報は量が多く、セクション分けによって入力の区切りを明確にすることで、ミスを減らしています。
3. 所属と共同演者情報の入力順序を工夫する
- Googleフォームでは、前の回答に応じて設問を動的に変更する機能がないため、
- 先に**所属機関名とその番号(1〜5)**を登録させ、
- その後、各共同演者の「氏名」と「所属番号」を選ばせる設計にしています。
- これにより、複数の共同演者が異なる所属を持つ場合でも、データの一貫性を確保できます。
4. 共同演者人数に柔軟対応できるよう空白許可にする
- 演題によって共同演者の人数は異なるため、共同演者欄は使用しない場合は空白で可としています。
- この設計により、最少人数(筆頭演者のみ)から大規模チームまで、幅広いケースに対応できます。
5. 演題タイトル・抄録本文に文字数制限を設ける
- 演題タイトル:100文字以内
- 抄録本文:1000文字以内
- Googleフォームには文字数制限機能があり、これを利用して送信時に自動チェックをかけています。
- これにより、「規定以上の長文」が送信できない仕組みを作り、事務局の後処理負担を減らします。
- なお、日本語と英語では文字数感覚が異なるため、異なる言語で登録を受け付ける場合にはフォーム自体を分ける設計にしています。(統合の方法も別の記事でご紹介しています。)
6. 特殊文字入力をサポートする
- Googleフォームでは特殊文字(ギリシャ文字、上付き・下付き文字など)を直接入力できないため、
- 使用頻度が高い特殊文字を一覧で提示し、コピー&ペーストでの利用を推奨しています。
- これにより、専門用語・単位記号なども正確に表記できるよう工夫しています。
7. メールアドレスの確認と自動返信設定(+PDF添付によるセルフチェック設計)
- メールアドレスを必須項目とし、送信後5分以内に自動返信メールが届くことを案内。
- 自動返信メールには、
- 登録内容をもとに整形した演題抄録のPDFファイルを添付。
- これにより、回答者自身が登録内容を客観的に確認できる仕組みになっています。 - 回答内容に誤りがあった場合は、フォーム送信後でも、回答修正リンクを使って自分で修正できるよう案内。
- こうした即時フィードバック+セルフ修正の流れを取り入れることで、運営側の訂正依頼対応を減らし、参加者自身の意識向上も促しています。
8. 事前参加登録番号を必須化する
- 事前参加登録者のみ演題登録を許可するため、**事前参加登録時に発行された受付番号(数字5桁等)**の入力を必須にしています。
- 登録番号によって、事前参加と演題登録を正確に突合でき、受付ミスや不正登録を防止できます。
9. 所属と演者情報を厳密に管理する
- 筆頭演者の所属は「所属1」とし、共同演者は所属番号(1〜5)を選択式に。
- 所属は複数選択可能とし、大学+研究所などの複合所属にも対応できるようにしています。
10. 特別枠応募(YIAなど)にも対応する設計
- 若手研究奨励賞(YIA)など、応募資格条件(年齢制限、学会所属)を明示し、選択肢で区別。
- 応募資格を満たしていない登録を防ぐための注意喚起も併記しています。
なぜこのような設計になっているのか(設計意図の解説)
セクション分割を採用した理由
- 特に共同演者情報を正しく管理するには、先に所属名と番号を登録させ、その番号を使って氏名と紐づける必要がありました。
- Googleフォームでは、回答内容によって設問を動的に変えることができないため、
ページを分け、入力の順序をコントロールする設計が不可欠でした。 - また、入力項目が多くなりがちなため、セクションごとにテーマを区切り、**「ゴールが見える設計」**にして回答負担を軽減しています。
所属と氏名を別設問に分けた理由
- 姓と名を別々に入力させることで、スペース位置のブレを防止できます。
- この設計により、後続の抄録集作成・名簿出力が格段にスムーズになります。
文字数制限を設けた理由
- 抄録の長さを統一し、冊子化・PDF出力時にレイアウトが乱れないようにするため。
- 文字数違反者はフォーム送信自体ができないように設定し、事前に自動フィルターをかけています。
特殊文字一覧を設けた理由
- 専門的な単位やギリシャ文字を使う場面が想定されるため、コピー用リストを事前提示することで回答者の入力ストレスを減らしています。
メールアドレス確認を徹底させた理由
- 演題登録後の連絡手段は基本的にメールのみ。
- 自動返信メールが届かない場合の即時対応を促すため、送信時に確認を促しています。
- 自動返信メールにPDF添付する理由
- フォーム送信後すぐに、登録内容をもとに作成した整形済み演題抄録PDFを自動送信することで、
- 自分の登録内容を客観的に確認できる
- 誤りや記載ミスに気付きやすくなる
- 誤りに気付いた場合には、回答後に編集リンクから自分で修正可能と案内することで、
事務局による訂正作業を最小限に抑えつつ、正確な登録情報を確保する設計になっています。 - こうした流れにより、運営負担を減らしながら、回答者自身の「正確な登録意識」を高めることができます。
事前参加登録番号を必須とした理由
- 事前参加登録をしていない方からの演題登録を防ぐため、受付番号必須入力を設けています。
- 番号の突合により、受付の信頼性を高めています。
回答内容の保存先は「Googleスプレッドシート」

フォームの作成画面の「回答」タブから「スプレッドシートにリンク」ボタンをクリックすることで、回答がリアルタイムで記録されるようになります。
さらにこのスプレッドシートにGoogle Apps Scriptを連携させることで、以下のような自動処理が可能になります:
- 回答ごとの受付番号の自動付番
- 名前や所属の自動整形(上付き表記など)
- 回答者へのメール自動送信
- 抄録の自動レイアウト出力(Word / PDF)
これらについて、後の記事で説明します。
まとめ
演題登録フォームの設計では、単に情報を集めるだけでなく、
正確なデータ収集・迅速なフィードバック・回答者自身のセルフチェック促進
をセットで設計することが求められます。
今回紹介した設計では、
- セクション分割
- 必須回答設定
- 氏名・所属情報の厳密管理
- 特殊文字対応
- 文字数制限
- メールアドレス確認+自動返信PDF添付
- 事前登録とのリンク など、細部にわたる工夫を積み重ねています。
これらを適切に設計することで、
ミスを減らし、参加者にも優しく、運営にも負担が少ない演題登録プロセスを実現できますよ。
次回予告
次の回では、スプレッドシートで自動的に受付番号を付与し、回答内容を整形する方法をご紹介します。
実際のGoogle Apps Scriptの記述方法も含め、丁寧に手順を解説しています!
👉 Google Apps Script(GAS)の基本:Google Apps Scriptとは何か、どんなことができるのかを、通し番号を付ける例で説明しています。
ご覧になりたい記事が決まっているなら・・・
👉 自作演題登録システムについて:Google formを使用して、演題登録システムを自作する方法の全体像を紹介するページです。
👉 Googleフォーム設計と注意点:Google formの作り方、演題登録システム構築に向けたフォームの設計と注意点を説明しています。(本ページ)
👉 Google Apps Script(GAS)の基本:Google Apps Scriptとは何か、どんなことができるのかを、通し番号を付ける例で説明しています。
👉 演題番号を自動で付ける方法:GASを使用して、演題番号を通し番号+演題振り分け記号を自動でつける方法を説明しています。
👉 抄録を整形して出力する方法:GASを使用して、Google formに入力された内容を抄録形式に自動的に整形する方法を説明しています。
👉 投稿者に抄録PDFをメール送付する方法:GASを使用して、自動付与した演題番号と抄録形式のPDFをメールで自動的連絡する方法を説明しています。
👉 フォーム送信時にすべてを自動化する方法:GASのトリガーを使用して、抄録を添付してフォーム入力者に自動応答メールを送信する方法を説明しています。
👉 複数フォームの統合方法:日本語フォームと英語フォーム等のように独立したフォームからの入力を1つのスプレッドシートに統合する方法を説明しています。
👉 受付フォーム構築例:事前参加登録をGoogle formで構築する注意点を説明しています。
👉 フォームリセット方法:Google Formの入力内容をリセットし、受付を1からやり直す方法(フォームの再利用も可能)を説明しています。
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